フルコースのデンマーク
     
  トレンド、スタイル、そしてセッティング

(デンマークの民族文化学者、ローネ・ラ−ベック・クリステンセンとロイヤル・コペンハーゲンのコラボレーションによるラインアップ)

デンマークで陶器が生まれ、つまりはロイヤル・コペンハーゲンが誕生してから、2000年で225周年目を迎えました。当初、陶器は貴族階級の豪華な晩餐を飾るためだけが目的のものでしたが、時を経て庶民の手に行き渡るようになっただけではなく、テーブル・マナー、様式、時代の流行、食生活、若しくは政治、社会、技術的背景の移り変わりを受けて変遷を遂げてきました。

デンマークの陶器の輝きに凝縮された歴史は、過去千年に次々と生まれた時代とその生活スタイルの移ろいを映し出し、今日のテーブル・スタイリストにも深い感動を見出していただけるに違いありません。
     
    1775・1790 I 1885〜1970 I 1970〜2000
   
1775
  力と権力
テーブルから立ち登る力強いパワーと富、ポリクロームの陶器が醸し出す上品さ。ブルー・ペイントのブルジョワジー。奇抜な様式の晩餐には、チュリーン、プレート、ボウルなどが幾何学的に配され、豪勢な一皿一皿が一時に卓上に勢揃いする、圧巻のコースです。
     
1790
  思想文化と植物の一斉開花
壮麗なチュリーンのディスプレイに似合うのは、テーブル・センターに置かれたミラー・プレートの上に飾り付けられた小さな陶製フィギュアやオベリスク、シンボリックな木の飾りや神殿など、この時代に流行したセッティング。独創的でシンプルなスタイリングです。

黄金時代とロマンティシズム
舞台は裕福なブルジョワジーのディナー・テーブルへ。チュリーンはミラー・プレート、または代々その家に伝わるプレートの周囲の定位置に置かれ、グラスはさらにその外周に、テーブルの輪郭を彩るように配置されます。

産業主義とヴィクトリアン
陶磁器やグラス類、カトラリーはさらにその数を増し、テーブル上にずらりと並べられました、史上もっともディナー・テーブルが重かった時代が到来しました。それまでの常識はドラスティックに覆され、テーブル・スタイリングは個性と独自性を表現する時代へと移ってゆきます。アイテム数の増えたセッティングは、それをあやつる難解なテーブル・マナーをも生み出し、その知識の深さが晩餐の席で問われる時代でもありました。
   
1885-1910
  自然と職人技とエッセンスと
テーブルの装いは、グリーンのワインに野の花、リボンやシフォンに彩られて軽やかに、エレガントに一新されました。サービング・プレートが登場し、アール・ヌーボーの様式も取り入れられました。
     
1910-1930
  混乱の時代に求められたシンプル・スタイル
卓上は徐々に華美な輝きを失い、シンプルになってゆきました。中世のアンティークをイメージした、ネオ・クラシック・スタイルです。調度や機能中心のオブジェクトは明確な存在感を放ちながらも、全体に緩やかな調和を作り出します。
     
1920-1940
  祝祭気分、はたまた必然の結果
ブルジョワの平民化が制定されたことを受け、邸宅や晩餐の規模は大幅に縮小され、お抱え給仕の数も減りました。テーブル・クロスは染みの目立たぬ色地のものに替わり、洗濯に便利なテーブル・マットやテーブル・ランナーが登場しました。アール・デコ・スタイルではピラミッドのモチーフのような強い色調や派手なオーナメントのもの好まれるようになりました。
     
1950-1970
  福祉国家&デザイン大国
ディナー・テーブルにはさらに利便性が追及され、特別な時だけ大きく伸ばせる小ぶりのものが主流になりました。テーブル・マットをはじめとする省スペース・グッズが続々と登場し、チーズにビール、最後にお茶を飲むといった気軽なホーム・パーティが毎晩のように開かれるようになりました。
   
1970
  若者の暴動、錆び付いたノスタルジア
食卓は今やキッチンの隅に移され、裸の飾りも無いパイン・テーブルでの夕食に。質実剛健なサービング、割れにくいガラス器。繊細な陶磁器は素焼きや厚みのあるファイアンスに取って替わりました。布製のナプキンは廃れ、バラエティ豊かな紙ナプキンが多用され、様式美は遠き昔日のノスタルジアに過ぎなくなりました。
     
1980
  分裂の時代とサブカルチャー
テーブルは再び華麗なファッションで飾られ、機能的なモダン・ライフの理念は過去の産物になりました。高価な食材を使った”スロー・フード”を上等のワインと共にたしなむのが流行になり、風合いの良いクロスや布ナプキン、シャンパングラスにデキャンタ、ヨーロッパの「古き良き」上流階級のしきたりに乗っ取ったサービスがもてはやされました。
     
1990
  センシュアル・モダニズム
しきたり、慣習には再び別れを告げ、世界中の味覚を楽しむようになり、新しいセンセーションが巻き起こりました。珍しい食材が食卓に上り、プレートやボウルの用途も家族毎のアイデアで独創性を増し、目的も大きく広がりました。シンプルで、機能的なものが好まれるようになりました。
     
2000-
  「今」に垣間見る歴史
私たちが時代や特定の時、場所などの体験を語るとき、食器、グラス、カトラリーは状況のある明確な要素を示します。バーチャルな体験がより身近になった現代では、私たちは逆に個々の独創性を表す確かな座標を求めているのです。個性を求める動きはさらに広がっています。アンティーク、新製品、クラシックまたはモダン・スタイル、デンマーク風、国際的など、、、全てが選択肢として平等に並べられているのです。